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藤田勇哉

絵画本来が持つ存在感はしっかりとした下地からも感じ取られ、丁寧な筆運びで描かれていくモチーフたちは単なる細密画とは違う、彼独特の世界観を創りあげています。絶妙な作品と距離感は、描かれた本来の対象の残像を残し、その深追いしないクールな観察眼こそ新鮮な今日性を感じさせるのです。


藤田勇哉「YF713」


藤田勇哉展 - à Paris -

  • 会期:2020年12月1日ー12日
  • 会場:平野古陶軒 東京都京橋2-11-10 京清堂ビル4階
  • 開廊時間:1100-1800 日曜休
  • 出品作品:油彩19点 ドローイング3点 立体1点
  • これまで長きに渡って彼が得意としてきた、フルーツやアンティークといった一つの塊を画面で捉えていくスタイルから、今回は目の前に広がる風景を綿布に落とし込む新たな試みの展覧会です。パリの街中を歩きながら、彼の視点にとまったその場面を切り取っていきます。それは単にその姿を映すものではなく、しっかりと彼自身の中を通り抜け、手先で握られた筆から、藤田勇哉のパリを表現していくのです。
  • 問い合わせ先:03-3535-2587 / info@kotoken.co.jp 


Oil paintng − 手の中で新たな命となり蘇る

古典的な静物画は、すでに完成された芸術であり、時代を超えて多くの人々を魅了し続けている素晴らしい芸術作品です。17世紀ネーデルラント、静物画を得意とするコルネリス・デ・ヘーム(Cornelis de Heem,1631-1695年)。私は彼の絵に心を奪われ、大きな影響を受けました。その透き通るような葡萄の表現に。 まだ自分の絵が確立されていなかった時期、私は彼の葡萄の表現を模範としていました。当時ヨーロッパの静物画家にとって、葡萄は画家の技量を計るモチーフと位置づけられていたそうです。私は日本に生まれ育ちましたが、私にとって油絵を画くことは、西欧美術への尊敬と共にあり、彼らからこれからも多くのことを学び続けていくでしょう。今でも葡萄は重要なモチーフであり、私を支える大きな支柱です。

私はしばらくの間、室内空間に花、果物、調度品といった、西欧の静物画のスタイルを踏襲していました。しかし次第に自分自身の欠如に気づき、それを見過ごすことができなくなりました。また伝統的なスタイルの中にいるだけでは不十分だと考えたのです。自分の描きたいものを、描きたいように描いてみよう、そう考え描いた絵が「YF 78(2007年)」でした。この絵を契機に次のスタイルが確立されていきます。 それは私自身が生きている環境を反映していました。狭い窓に切り取られた単純な景色。シンプルな家具に囲まれた生活。踏み込みすぎない他者との距離感。幼少期を過ごした広々とした郊外は徐々に住宅で埋め尽くされ、自然は失われ、急速に別の街へと変貌していきました。モノの本質や全体像が見えづらくなっている環境の中で、私自身の感じ方も変化していきました。そして新たに描き始めた絵は、いまの私の感覚に近づいているように感じられました。 描こうとする対象をキャンバスの中で大きくトリミングし、その背景をひとつのトーンとマチエール(絵肌)にまとめる。構図、色彩のふたつを極限まで洗練させていくことで導かれた「新しい美学」を私は獲得するようになったのです。

大学生の時、白亜地の作り方を学び、テンペラ画の技法で描いていた時期がありました。 その頃からずっと綿布を使用しています。キャンバスに比べて、綿布はきめ細かくて柔らかく、その肌合いが、私の描き方には合っているように感じます。また、油絵の場合、艶がある状態が普通で、場合によっては完成後に画面保護の観点から全体にニスを塗ることもありますが、私は艶が少ない状態を好んでいます。少しザラザラして乾いているような感じや、わずかに湿っているような肌合いは絵の中に入っていけるような親近感があり、私の絵のイメージをつくる重要な要素です。

油絵を画くこと。フランス。私にとってこの2つは、強く結びついています。少年期に出会った油絵の先生がフランスで絵を学んだ人だったことがその源だと思います。先生の画室の書棚に並ぶ画集は、フランスへの憧れを募らせました。 果物を描くときも、花を描くときも、私の頭の中にはフランス、特にパリの空気や色彩のイメージがあります。実際にパリを訪問するようになると、そのイメージはより鮮明になりました。蚤の市で気になる古道具を買い集め、それらは新しいモチーフとなりました。使い道を失った錆びた缶や紙箱に、私は心惹かれました。かつて見知らぬ誰かが使っていたこの缶は、いま私の手の中にあり、息を吹き返し、絵を描くことで新たな命となり蘇る。果物や花を描く場合でも同じことです。それは、ずっと考え続けてきたこと、私はなぜ絵を描いているのだろう? この問に対する現時点での答えです。

2020.8 藤田勇哉

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Drawing ― 存在を紙に刻む

私にとって白い紙は、無垢で、閉鎖的で、それと同時に無限に広がる場所です。そこに、対象が「そこに、ただ」存在していたという事実だけを鉛筆で、時間をかけて慎重に刻み込んでいきます。対象を見つめ、手で触り、鉛筆で紙に刻む、その行為を繰り返すのです。